「よう、レーザーウェーブ」
「……スタースクリーム」
「エネルゴン持って来たぜー」
スタースクリームがやってきた。足元にはフレンジーとランブルが両手に
エネルゴンキューブを持って挨拶を交わしてきた。
更にスペースブリッジの中には台車に大量のエネルゴンがみてとれる。ありがたい。
スタースクリームの少し後ろにジャガーもいる。エネルゴンキューブももてないのになんで連れて来たんだ。
「久しぶりじゃないか。サウンドウェーブはどうだ?」
「本当は一緒にくるって話だったんだけどよ~」
「あっちで仕事だってよ」
色違いのカセットがにこにこしながら話しかけてくる。
その頭を撫でると嬉しそうに笑った。相変わらずにぎやかで可愛い2体だ。
スタースクリームは最初に挨拶だけしてセイバートロン星を監視するモニターの前に座って一息ついていた。
ジャガーも足元に一度すり付いて来ただけでスタースクリームの足元に行くと丸くなって座った。
「開き貯蔵庫どこ~?」
「確かまだBブロックには残りがあったからEブロックのほうに置いてくれるか?」
「Eって鍵かかってねぇ?」
「このカードキーで入れる。頼んだぞ」
「おう!」
基地内のマスターキーを渡すと2体は台車を押しながら倉庫へ向かった。
自分はそれを最後まで見送ってスタースクリームの元に歩みを進めた。
「…今日はなんもねーのか?」
「エネルゴンか?今だそう」
改良した固形エネルゴンをスタースクリームの前に出す。
小さい三又の棒を渡すとスタースクリームが「フォークか?」と言った。
「フォーク?」
「地球に似たようなもんがあったぜ」
「そうなのか。案外進んだ星なのだな」
「進んじゃいねーだろ…」
そのフォークに酷似したものをエネルゴンに刺して3等分すると
そのうちの一つをスタースクリームが口に放った。
「…甘い」
「カセットロンが喜ぶと思ってな」
「…味は羊羹に似てる…」
「また地球の物か?満喫してるじゃないか」
ぴたっとスタースクリームは租借する口を止めると
一欠けら、床下で丸くなるジャガーに差し出した。
ジャガーは数度匂いを嗅いでスタースクリームの手からぱくっと
頂くとはぐはぐと食べ始めた。スタースクリームがその頭を撫でると
ジャガーはお礼とばかりにその手を舐めた。
「…俺は早くセイバートロン星に帰りてぇけどな」
「…」
スタースクリームは地球に行ってから少し変わった。
性格も、雰囲気も、メガトロン様に対しても。
特に、あの出来事から。
「…やはりメガトロン様に言うつもりはないのか?」
「ねーよ」
「…これからずっと騙していくつもりか?」
「…ずっとじゃねぇ」
スタースクリームは最後の一欠けらもジャガーに渡すとジャガーは嬉しそうに頬張った。
それを黙ってみるスタースクリームは元、メガトロン様の愛人だ。
「調子は、どうだ?」
「…一応良くはなってる。本数がわかるくらいには」
「…」
スタースクリームが「快感」を感じなくなって数ヶ月以上たった。
メガトロン様に身体の異常を教えず、愛人をやめて数ヶ月以上でもある。
メガトロン様は何故問い詰めないのか。サウンドウェーブは…
「サウンドウェーブは?」
「特になにも。時々恋人の真似するだけだ。後定期的に検診しやがる」
「しやがるって…してくれてるんだろう」
「…1週間、2週間じゃ結果が出るはずねぇのわかってんのに定期検診だぜ?面倒くせぇ」
「…」
スタースクリームのレセプタクルが壊れたのはアストロトレインとコンバットロンのせいだと
スタースクリーム本人から聞いた。サウンドウェーブは自分の責任もあると言った。
しかし、そんなこと言ったら自分にもその責はある。
『んっあ!』
ジャガーを撫でるスタースクリームを見ながら思い出す。
スタースクリームが今座ってる席はコスミックルストの対策ウイルスソフトのダウンロードといえど
自分のコネクタを挿し、接続をした場所でもある。
自分もスタースクリームのレセプタクルを損傷させ、負荷をかけた一人なのだ。
ジャガーがいるのが救いか。あの日と違うと言う実感がある。
「…言うなよ」
「なに?」
「…メガトロンに言うなよ」
「…」
スタースクリームがジャガーから顔を上げるとその表情は凄みがあった。
言ったらただじゃおかねぇとでも言い出しそうだな。
「…言わないさ」
「…」
「ほら、そろそろフレンジー達が帰ってくる。もう一ついるか?」
「何を」
「エネルゴン」
「いらね」
スタースクリームの足元で呼ばれても居ないのに顔を上げて「もうひとつ?」と
物欲しそうな顔をしたジャガーをみて笑う。
「残念。ジャガーは食べすぎだ」
「だとよ。諦めな。ジャガー」
ギャウと声をあげたジャガーにスタースクリームが笑いかけて
フレンジー達の帰りを待った。
言わない。多分。
言わないのはメガトロン様に謀反をおこしたことになるだろうか。
しかしスタースクリームとサウンドウェーブの頑張りを無碍にもしたくない。
「駄目だ。ジャガー」
ジャガーに声をかけるスタースクリームが笑ってる。
笑えるほどの元気があるのだ。自分が動くまでもない。
『…メガトロン様がお前を寵愛する理由がわかるよ』
『…ちょ、うあい?』
『されてるだろ?』
『…まさか…』
本当にわからないのか?スタースクリーム。
メガトロン様はお前が快感を感じなくなったからって捨てたりしない。
お前が自分以外の誰かに抱かれたからといって激昂したりしない。
お互いが速く気付けば良いとレーザーウェーブは微かに笑うだけだった。
PR